児童扶養手当について調べていると、必ず出てくるのが「所得」という言葉です。
「年収なら分かるけど、所得ってどうやって計算するの?」
「給与以外に養育費も関係するの?」
「控除を引いたら、児童扶養手当の所得はいくらになる?」
このように、児童扶養手当の所得計算は少し分かりにくい仕組みになっています。
この記事では、児童扶養手当の所得について、給与収入・養育費・控除を順番に確認しながら、どのように計算するのかを分かりやすく解説します。
児童扶養手当の「所得」は年収そのものではない
まず知っておきたいのが、児童扶養手当の所得制限で使われる「所得」は、単純な年収ではないということです。
給与を受け取っている場合でも、1年間に受け取った給与の金額が、そのまま児童扶養手当の判定に使われるわけではありません。
給与収入から給与所得控除などを反映したうえで所得を計算し、さらに児童扶養手当では、養育費や一定の控除なども考慮します。
イメージすると、次のような流れです。
給与などの収入
↓
給与所得控除などを反映
↓
養育費の8割相当額を加算
↓
一定の控除を差し引く
↓
児童扶養手当の判定に使われる所得
実際の計算では、給与以外の所得や個々の控除などによっても変わるため、上記はあくまで基本的なイメージです。
児童扶養手当の所得を計算する3つのステップ
児童扶養手当の所得を確認するときは、主に次の3つを確認していきます。
- 給与などの収入から所得を計算する
- 養育費の8割相当額を加える
- 対象となる控除を差し引く
ここから、それぞれ順番に見ていきます。
① 給与収入から「給与所得」を計算する
会社員やパートなど、給与を受け取っている場合は、給与収入がそのまま所得になるわけではありません。
給与収入から給与所得控除を反映して、給与所得を計算します。
給与所得控除については、国税庁「給与所得控除」から計算式が見られます
例えば、年収300万円だったとしても、「所得も300万円」と考えるわけではありません。
年収から、給与所得控除を引いたものが「給与所得」となります。
例えば、年収300万円(パート・会社員など)の場合、給与所得控除は 98万円 になります。
- 給与収入(年収): 300万円
- 給与所得控除: 98万円
- 給与所得:202万円(300万円 - 98万円)
そのため、児童扶養手当について考えるときは、「年収はいくらか」だけでなく「給与所得はいくらか」を確認することが大切です。
会社員やパートの方で「手元にある源泉徴収票で確認したい」という場合は、『給与所得控除後の金額』と書かれている欄の数字が、ここでの「給与所得」にあたります。
自営業・個人事業主の場合の所得計算
自営業やフリーランスなど事業所得がある場合は、給与所得控除ではなく「売上(収入)から必要経費を差し引いた金額(事業所得)」がベースになります。
手元に確定申告書がある場合は、第一表の『事業所得』の金額(青色申告特別控除などを差し引いた後の金額)を確認してみてください。
なお、給与所得と事業所得の両方がある場合は、それぞれの所得を合算して計算します。
② 養育費を受け取っている場合は「8割」を加算する
離婚後に元配偶者から養育費を受け取っている場合は、もう一つ注意が必要です。
児童扶養手当の所得を計算するときは、受給者やその児童が父または母から受け取った養育費について、その8割相当額を所得に加算します。
例えば、1年間に90万円の養育費を受け取った場合は、
90万円 × 80% = 72万円
となり、72万円が所得の計算に加わるイメージです。
例えば、年収300万円(パート・会社員など)、養育費90万円/年の場合
- 給与所得:202万円
- 養育費: 72万円(90万円 × 80% = 72万円)
- 所得:274万円(202万円 + 72万円)
つまり、給与収入だけを見て「所得制限にはかからない」と判断することはできません。
養育費を受け取っている場合は、給与などの所得とあわせて確認する必要があります。
③ 児童扶養手当の計算で使える控除を確認する
児童扶養手当の所得を計算するときには、一定の控除を差し引くことができます。
そのため、同じ年収・同じ養育費であっても、控除の状況によって判定に使われる所得が変わることがあります。
児童扶養手当の所得計算では、まず社会保険料相当額として一律8万円が差し引かれます。さらに、個人の状況に応じて以下のような控除を差し引くことができます。
- 一律控除(8万円)
- 給与所得または公的年金等がある場合の10万円控除(所得が10万円未満の場合はその額)※給与所得・公的年金所得がある人のみ
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等)
- 医療費控除
- 障害者控除
- 寡婦控除・ひとり親控除※受給資格者本人が母または父の場合は対象外
- 勤労学生控除
- 特定親族特別控除※令和8年11月分から対象
- その他の一定の控除
ただし、ここで注意したいのが、税金を計算するときに使える控除と、児童扶養手当の所得計算で使える控除は完全に同じではないということです。
「確定申告で控除できたから、児童扶養手当でも同じように引ける」とは限らないため、児童扶養手当独自の計算方法を確認する必要があります。
児童扶養手当の所得計算を具体例で見てみよう
ここまでの内容を、簡単な例で見てみましょう。
例えば、扶養親族等が1人、給与収入300万円、養育費90万円、iDeCoを毎月2万円拠出している場合です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与収入 | 300万円 |
| 給与所得控除後の給与所得 | 202万円 |
| 養育費 | 90万円 |
| 養育費の8割 | 72万円 |
| 各種控除 | ・一律控除8万円 ・給与所得・公的年金等所得に係る控除10万円 ・iDeCo24万円 |
| 判定に使われる所得 | 202万円(給与所得)+ 72万円(養育費8割)− 42万円(控除合計)= 232万円 |
ここまで計算して、児童扶養手当の判定に使われる所得が分かったら、次に所得制限限度額と比較します。
所得制限そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。→ 児童扶養手当の「所得制限」とは?年収と所得の違いをわかりやすく解説
所得制限限度額は、扶養親族等の人数によって異なります。
例えば令和8年度では、扶養親族等が1人の場合、本人の所得制限限度額は、全部支給で107万円、一部支給で246万円です。
先ほど計算した判定に使われる所得は「232万円」です。扶養親族等が1人の場合、令和8年度の一部支給の所得制限限度額は246万円なので、この例では一部支給の対象となる所得水準です。
iDeCoや医療費控除は児童扶養手当の所得にどう影響する?
所得制限の境目にいる場合は、控除によって判定に使われる所得が変わり、「手当が支給されるか・対象外になるか」の分かれ目になることがあります。
例えば、先ほどの具体例(扶養親族1人)で考えてみましょう。
- iDeCoを年間24万円活用した場合
判定に使われる所得:232万円
▶一部支給の所得制限限度額(246万円)に収まるため、手当が支給される(一部支給) - もしiDeCoをやっていなかった場合(控除24万円がない場合)
判定に使われる所得:232万円 + 24万円 = 256万円
▶一部支給の所得制限限度額(246万円)を超えてしまうため、手当は「支給なし(対象外)」
このように、iDeCoや医療費控除などの控除を活用して所得を抑えることで、手当の支給対象に入ったり、より受給額が多い区分(全部支給など)に切り替わったりするケースがあります。
iDeCoの詳しい計算方法や注意点は、こちらの記事で詳しく解説しています。
自分の児童扶養手当の所得を計算するときのポイント
児童扶養手当の所得を確認するときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 給与などの収入を確認する
- 給与所得控除などを反映する
- 養育費を受け取っている場合は8割相当額を加える
- 児童扶養手当で認められる控除を確認する
- 計算した所得を所得制限限度額と比較する
ここまで確認して、初めて「自分の場合、全部支給なのか、一部支給なのか、それとも所得制限を超えているのか」を判断できます。
収入の目安がわかるなら「逆算」して控除を計画するのもおすすめ!
特に会社員やパートなどの給与所得者の場合、1年間の収入の目安が比較的予測しやすいのが特徴です。
そのため、あらかじめ「あといくら所得を下げれば所得制限の枠に収まるか(あるいは一部支給から全部支給になるか)」を逆算し、iDeCoや医療費控除など、対象となる控除がある場合は、どの程度所得に影響するのかをあらかじめ確認しておきましょう。
さらに、2026年12月1日からiDeCoの拠出限度額が引き上げられる予定です。実際の掛金は、2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から変更されます。
会社員などの第2号被保険者は、勤務先の企業年金等との関係がありますが、iDeCoの拠出限度額が月額6.2万円に引き上げられます。
これまで以上にiDeCoを活用して所得を調整しやすくなるため、手当の制限ラインギリギリにいる方は、早めにシミュレーションして準備しておくと安心です。
まとめ|児童扶養手当は「年収」だけでは計算できない
児童扶養手当の所得計算は少し複雑ですが、ポイントを整理すると、
- 給与収入がそのまま「所得」になるわけではない
- 給与所得控除などを反映して所得を計算する
- 養育費を受け取っている場合は、その8割相当額を加える
- 一定の控除を差し引くことができる
- 最終的な所得を所得制限限度額と比較する
という流れになります。
「年収が○万円だから、児童扶養手当はもらえない」と自己判断するのではなく、自分の場合の所得がいくらになるのかを確認することが大切です。
特に養育費や控除がある場合は、年収だけでは判断できません。
なお、実際の認定は自治体で行われるため、ここでの計算は制度を理解するための目安として確認してください。


