「児童扶養手当の所得制限が気になる」
「あと少し所得が低ければ、児童扶養手当をもらえるのに……」
そんなときに知っておきたいのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoの掛金は、税金の計算だけでなく、児童扶養手当の所得計算でも小規模企業共済等掛金控除として扱われます。
そのため、所得制限の境目にいる人にとっては、iDeCoを活用することで児童扶養手当の支給額に影響する可能性があります。
ただし、
「児童扶養手当をもらうために、iDeCoを上限まで掛ければいい」
というわけではありません。
iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せないため、手元のお金が少ない人が無理をして掛金を増やすと、今の生活が苦しくなってしまうこともあります。
この記事では、iDeCoと児童扶養手当の関係から、実際に掛金をどう考えればいいのかまで解説します。
この記事でわかること
- iDeCoが児童扶養手当の所得制限を下げる仕組み
- iDeCoで手当がいくら変わるのか(計算の目安)
- 「あといくら所得を下げればいいか」という逆算の考え方
- 無理をして満額掛けないための判断基準(貯金あり/なし)
児童扶養手当とiDeCoの関係とは?
児童扶養手当の支給額は、単純な「年収」ではなく「所得」をもとに判断されます。
給与収入がある場合は給与所得控除等を反映して「給与所得」を出し、養育費を受け取っている場合はその8割相当額を加算します。そこから各種控除を差し引いて、最終的な判定を行います。
その控除の対象となるのが、iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)です。
そのため、児童扶養手当の所得計算では、iDeCoの掛金が所得を下げる方向に働きます。

イメージすると、こんな流れです。
【収入】給与などの収入
↓
【所得】給与所得の計算 + 養育費(8割)を加算
↓
【控除】医療費控除やiDeCo(小規模企業共済等掛金控除)を差し引く
↓
【判定】最終的な児童扶養手当の判定所得が決定!
こども家庭庁にも「小規模企業共済等掛金控除額」が所得計算の控除項目として明記されています。つまり、iDeCoに拠出した金額の分だけ判定用の所得を直接引き下げる効果があります。
そのため、同じ年収であってもiDeCoなどの控除を活用することで判定用所得が下がり、手当の判定結果(受給の可否や支給額)が変わる可能性があります。
「年収だけを見て、自分は対象外だと思っていた」という人は、一度きちんと所得を計算してみることをおすすめします。
所得の計算方法については、→児童扶養手当の所得はどう計算する?給与・養育費・控除を詳しく解説で詳しく解説しています。
iDeCoをすると児童扶養手当はいくら変わる?
「iDeCoの掛金が控除になる」と聞くと、次に気になるのが、
「じゃあ、実際に児童扶養手当はいくら増えるの?」
ということですよね。
ここで注意したいのは、iDeCoを掛けた金額と同じだけ児童扶養手当が増えるわけではないということです。
児童扶養手当の一部支給は、所得に応じて支給額が段階的に変わります。
令和8年度の児童扶養手当は、子ども1人の場合、全部支給の月額は48,050円、一部支給は11,340円~48,040円です。
一部支給額は、所得に応じて計算されるため、所得が少し下がれば、その分だけ支給額も変わります。
一部支給の計算では、所得が1万円下がると、手当は月約264円増える計算になります。
例えば、単純化して考えると……
| 所得が下がる額 | 月あたりの手当増加額の目安 | 年間の増加額の目安 |
|---|---|---|
| 5万円 | 約1,320円 | 約15,840円 |
| 10万円 | 約2,640円 | 約31,680円 |
| 20万円 | 約5,280円 | 約63,360円 |
| 30万円 | 約7,920円 | 約95,040円 |
あくまで計算上の目安ですが、ここからわかるのは、所得を下げれば、その分だけ手当が段階的に増えていくということです。
つまり、児童扶養手当の所得制限が気になるからといって、最初からiDeCoを上限まで掛ける必要があるとは限りません。
iDeCoの掛金は「目標の所得引き下げ額」から逆算する
iDeCoを児童扶養手当との関係で考えるなら、私は「いくらiDeCoを掛けるか」から考えないことをおすすめします。
先に考えたいのは、
「あといくら所得を下げればいいの?」
ということです。
例えば、自分の所得を計算してみたところ、児童扶養手当の所得制限まであと20万円だったとします。
その場合、
「iDeCoを満額にしよう!」
と考えるのではなく、
「20万円をどうやって下げる?」
と考えてみます。
例えば、iDeCoを月1万円にすると年間12万円。
月2万円なら年間24万円です。
| iDeCoの掛金 | 年間の掛金 |
|---|---|
| 月1万円 | 12万円 |
| 月2万円 | 24万円 |
| 月3万円 | 36万円 |
| 月5万円 | 60万円 |
もちろん、実際の児童扶養手当の判定には、養育費や医療費控除など、ほかの要素も関係します。
そのため、単純に「あと20万円だからiDeCoを20万円掛ければOK」とは限りません。
まず自分の所得を計算し、どのくらいの控除が必要なのかを確認してから掛金を決めることが大切です。
iDeCoは「満額かゼロか」ではありません
iDeCoというと、
「上限まで掛ける」
「やらない」
の二択のように感じるかもしれません。
でも、実際にはそうではありません。
自分の家計に合わせて、最低5,000円から、1,000円単位で上限額まで自由に設定できます。そのため、無理のない範囲で掛金を設定することができます。
2026年12月から予定されている制度改正では、国民年金第2号被保険者(会社員・公務員)のiDeCoの拠出限度額は、企業年金などとの合計で月額6万2,000円に引き上げられます。
企業年金がない第2号被保険者であれば、月6万2,000円がiDeCoの拠出限度額となる予定です。
年間にすると、
6万2,000円 × 12か月=74万4,000円
です。
かなり大きな金額ですよね。
児童扶養手当の所得制限が気になる人は、
- 老後資金としていくら準備したいのか
- 手元にいくら現金を残しておきたいのか
- 児童扶養手当の所得制限まで、あとどのくらいなのか
この3つを見ながら考えてみましょう。
児童扶養手当のためにiDeCoを満額にする必要はある?
ここは、私自身も特に注意してほしいと思っているところです。
児童扶養手当の所得制限を少し超えそうな場合、
「iDeCoをたくさん掛ければ、手当をもらえるかもしれない」
と考えることがあります。
でも、児童扶養手当だけを理由にiDeCoの掛金を決めるのはおすすめしません。
なぜなら、iDeCoには「老後資金を準備する」という本来の目的があり、原則として60歳まで資産を引き出せないからです。
手元のお金に余裕があるなら、iDeCoを増やす選択肢もある
例えば、
- 生活防衛資金を十分に確保している
- 子どもの教育費など、近い将来の支出にも対応できる
- もともと老後資金として積立投資をする予定だった
- iDeCoによる所得税・住民税の節税効果も期待できる
という人なら、iDeCoの掛金を増やすことを検討しやすいでしょう。
この場合は、
「児童扶養手当をもらうためにiDeCoをする」
というより、
「もともと必要だった老後資金をiDeCoで準備しながら、所得控除も活用する」
という考え方です。
結果として、税金だけでなく児童扶養手当の所得計算にも影響する可能性があります。
手元のお金が少ないなら、無理に増やさない
一方で、
- 貯金があまりない
- 毎月の生活費に余裕がない
- 子どもの進学や入学など、大きな支出が近い
- 急な出費に備える現金を十分に確保できていない
という場合は、注意が必要です。
iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せません。
そのため、児童扶養手当を少し増やすために無理をして掛金を増やし、今すぐ使える現金が足りなくなってしまっては本末転倒です。
ひとり親の場合は、子どもの進学費用や急な病気、家電の故障など、まとまったお金が必要になることもあります。
「老後のお金」と「今の生活を守るお金」は、別々に考えることが大切です。
iDeCoの「節税」と児童扶養手当のメリットを一緒に考える
iDeCoには、掛金が所得控除になることで所得税・住民税の負担を軽減できるというメリットがあります。
さらに、児童扶養手当の所得計算でも小規模企業共済等掛金控除が考慮されるため、所得制限の境目にいる人にとっては、児童扶養手当の支給額にも影響する可能性があります。
つまり、老後資金としてiDeCoを利用することで、
- 老後資金を準備する
- 税金の負担を軽減する
- 児童扶養手当の所得計算にも影響する
という複数のメリットを考えられます。
ただし、これは「手当を増やすためなら、iDeCoをたくさん掛けるほど得」という意味ではありません。
あくまでも、老後資金として必要な金額や、今の家計とのバランスを考えたうえで利用することが大切です。
児童扶養手当の所得制限を考えるなら、まず自分の所得を計算しよう
ここまで読んで、
「じゃあ私はiDeCoをいくら掛ければいいの?」
と思った人もいるかもしれません。
でも、いきなりiDeCoの掛金を決める必要はありません。
まずは、自分の児童扶養手当の所得がいくらになるのかを確認してみましょう。
確認したいのは、例えば次のような項目です。
- 給与などの収入
- 給与所得控除
- 養育費
- 医療費控除
- iDeCoなどの小規模企業共済等掛金控除
- その他の控除
- 扶養親族等の人数
そのうえで、
「所得制限まであといくら?」
を確認します。
「あと20万円下げればいい」のか、「すでに範囲内なのか」で、iDeCoの考え方も変わります。
iDeCoだけでなく、医療費控除など利用できる制度を含めて考えていきましょう。
まとめ|iDeCoは「児童扶養手当のため」だけに使わない
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として、児童扶養手当の所得計算にも反映されます。
そのため、所得制限の境目にいる人にとって、iDeCoは検討できる選択肢のひとつです。
ただし、
「児童扶養手当をもらうために、とにかくiDeCoを満額!」
と考える必要はありません。
iDeCoは老後資金を準備するための制度で、原則として60歳まで資産を引き出せません。
だからこそ、
- 今の生活に必要なお金はいくらか
- 生活防衛資金は十分にあるか
- 子どもの教育費など、近い将来の支出はないか
- 老後資金としていくら準備したいか
- 児童扶養手当の所得制限まであといくらなのか
を考えて、掛金を決めることが大切です。
私が一番おすすめしたい考え方は、「iDeCoをいくら掛けるか」ではなく、「あといくら所得を下げればいいか」から逆算することです。
必要以上にiDeCoへお金を入れるのではなく、今の家計と将来の資金計画を見ながら、無理のない範囲で制度を活用していきましょう。
「知らなかったから手当をもらえなかった」ではなく、使える制度を知ったうえで、自分の家計に合った選択ができるようにしておきたいですね。


